2012年3月24日 (土)

 第十二話:駄菓子屋のクジと過剰なサービス

 私たち昭和40年代に子供時代を過ごした世代は、駄菓子屋というのに懐かしさと子供時代の特別な思いを感じるわけです。しかし、どういうわけか、妻は駄菓子屋が存在しないような大都会の真ん中で生まれ育ったので、そういう駄菓子屋経験がありません。最近、スーパーなどで昔なつかしい駄菓子屋コーナーなんてのがあることがありますが、私がいちいち「なつかしい!」と感動してしょーもない菓子を買ったりするのをみて、「なんであんな気味の悪い菓子が欲しいわけ?」といっていたりします(苦笑)。まあ確かに、冷静に考えると気味の悪い菓子ではあります。しかし、そんな気味の悪い菓子でも、子供にしてみれば、ちゃんとしたスーパーなどでちゃんとした菓子を買うよりは、駄菓子屋に行くほうがずっと魅力的だったわけです。 

 あれは小学校2年生くらいのことだったかな?小遣い10円もらって近所の駄菓子屋にチョコレートの「くじ」を引きにいきました。チョコレートの「くじ」。「はずれ」だとなんか一口サイズのちっちゃいチョコで、上の等が出るとだんだん大きくなるっていうの、上の等が当たって、友達に大きなチョコレートを見せびらかしながら食べるってのが一つのステイタスみたいなもんでしたね。あれは一種の「遊び」だったと思うんです。単にチョコレートを買いにいくという目的よりも、「くじ」を引くというのが「遊び」の一つでした。

 さて、小学生の私は、そういうわけで、駄菓子屋にいって「くじ」を引きました。くじを引くのも子供なりのノウハウが流通していて、「端の方のを引くと当たる」とかいうのが当時の子供のあいだでは定説になっていました。まあ、ああいう駄菓子の「くじ」というのは、最初から一等が出てしまったりすると、だれも引きたがらなくなるので、アタリくじは別になっているんです。だから、駄菓子屋さんとしては、そういうアタリくじは端の方に入れておいて、あまり引かせないようにしておくか、あるいは最初から入れないとか、そういう工夫をしていたと思うんで、「端の方があたる」というのはたまたまそこの駄菓子屋さんがアタリくじを端の方に入れておいたのを子供なりのリサーチにより発見したということでしょうね。

 さて、その日もその子供なりの定説にもとづいて端の方を引きました。すると、なんと1等です!「やった~!」と思った私は、よろこびいさんで店のオバチャンにその1等くじを見せました。そうしたら、オバチャンが「ちょっとまって」といって店の奥にひっこみ、「1等はこれね」といって差し出したものは....なんと「ソロバン」でした。ちゃんとした大人が使う木製のソロバン。確かにチョコレートよりははるかに高価なものですが、子供としては「がっくり」だったというかショックというか、しかし、今日一日の小遣いをこんなものに換えられてはたまらんと思い、必死で抵抗しました。「ぼく、はずれでいいから、これにして!」と、はずれの一口サイズのチョコを指差して言いました。しかし、オバチャンも粘ります。「これがあたったんだから、これ持ってかえってよ。おかあさんが喜ぶよ。」(注:昭和40年代ですからね。今、そんなもの持って帰ってもお母さんは喜びません)といいます。「これ、買ったら1000円はくだらないよ」と。そりゃ、そうかもしれないけど、オレはチョコが欲しくてくじ引いたんだがなぁ。どうしても納得がいかないのでずいぶん長時間粘りつづけました。そのあいだに近所のオバチャンが店にきて、そのやりとりを見て店のオバチャン側についたりして必死に私を説得してました(笑)。しかし俺も頑固だよなぁ。ようやく、店のオバチャンもあきらめて、「しょうがないねぇ、もういっかい引いていいよ。でもまた1等だったらこれ持ってかえってね」というので、もう一度くじを引かせてもらい、「はずれ」が出た時の嬉しかったこと(笑)。そうしてはずれのチョコレートを持って店を出た時はあたりはもうすっかり暗くなっていました(爆笑)。

 そうして、大人になってからも、似たような経験が(苦笑)。まだ独身の頃、近所のスーパーに歯磨き粉を買いにいった時の事です。棚から歯磨き粉を一つとって、買い物カゴに入れたその時です。それを見ていた店のオネエサンがよってきて、「今、キャンペーンやっているのでサイコロを振ってください」といいます。なんでも「ゾロ目」が出たらアタリなんだそうで、「はいはい」と何気なくサイコロをふったら、出てしまったんです。ゾロ目。「おめでとうございます!」といって洗濯洗剤やら洗濯ばさみやらハンガーやらの洗濯用品やら、何故か生卵やら、と、持てないくらいの賞品をくれました。独身なんでそんなに沢山いらないんだがなぁ、と思いつつも、子供のころのように「はずれにしてくれ」とも言えず、他にもいっぱい買い物したかったのに、もうこれ以上手に持てず、まっすぐ家に帰るしかなくなったのでした(苦笑)。

 なんというか、過剰なサービスなんですかね。ありがた迷惑というか。

 過剰なサービスといえばもう一つ。結婚して間もない頃、近所にレストランが二つ向かい合っているところがあり、その一軒に行ったときのことです。妻と二人あわせて2000円くらい飲み食いしただけなのに、会計すると、500円のサービス券を2枚くれました。「おいおい、これって半額って事?」あとできいた話しですが、どうも、その向かい合っている2軒の店がものすごい競争をくりひろげていたようで、もう一軒の店にいっても同じような状況だったそうです。で、折角500円サービス券もらったんだからと、しばらくしてまたその店に行きました。同じように妻と二人で2000円くらい飲み食いしました。500円サービス券を2枚使いましたので、支払いは1000円くらいだったのですが、それでもまた、500円サービス券を2枚くれました(驚)。これって、結局タダなんですけど!しかし、その時もらった500円サービス券は二度と使うことがありませんでした。何故って?しばらく後、その向かい合った2軒のレストランはどちらもなくなってしまいました。無理もないわな(哀)。

 まあ、商売ですから、サービスはほどほどに。過剰なサービスを迷惑がる私のような客もいるかもよ。

2012年3月 2日 (金)

第十一話:限定四食の秘密

 もう、かれこれ20年は通っているなじみの店があります。蕎麦屋なのですが、店主が日本酒が大好きで、日本酒を楽しむ会を毎月やっています。日本酒を楽しむ会は会費を払って、あとは、ずらりと並んだ一升瓶から、好きな酒を好きなだけ飲むという会なのです。Sake 日本酒好きの人にはたまらない銘柄、普段なかなか手に入らない酒など沢山出るので、一度参加したらハマってしまう人が多いのです。それに、常連ばかりが集まる会なので、20年もやっていると、常連さん同士、顔見知りになり、毎月、その場でしか会わない友達が沢山います。

 私などは店主と酒蔵めぐりの旅行にいったり、日本酒のイベントに参加したりと、日本酒を楽しむ会以外でも楽しませてもらっています。

 私などは、なじみの客ですから、もう我が家のようなもので、いくと、店主が、

「ビール飲なら冷蔵庫から適当に出して飲んでいいよ」

ってなもんで、勝手にやらせてもらったりします。

先日などは客が多くて忙しすぎて、私はしばらく放置されてしまい、ビールと日本酒だけで1時間過ごしました(笑)。その間、つまみもなにも一切なく(笑)。

さすがに、1時間も酒だけ飲んでたら、つまみが欲しくなり、まわりの数人と

「そろそろつまみが欲しいなあ、こりゃあ、手伝わないとダメかな」

と、笑いながら相談してました。

まあ、だいたい日本酒を楽しむ会といっても、途中からは店主が一緒になって飲む会なんですから、時々、客が店を手伝ったりしてます。

蕎麦屋なので、最後のシメに蕎麦を出してくれるんですが、蕎麦が出るころには、みんな相当に出来上がっていますので、

「ねえ、マスター(店主はなぜかそう呼ばれている)、そろそろ蕎麦が食べたいなあ」

と誰かが言うのを合図に、店主が重い腰を上げて蕎麦を作り始めます。この蕎麦がまた、美味いんだ。とても酔っぱらった店主が作ったものとは思えない(笑)。

 しばらく前から、壁に

「イベリコ豚 肉せいろ はじめました 限定四食」

 と、貼りだしてあるのが気になっていました。Gentei_2 そういえば、メニューにない幻のメニューというのがいくつかありました。なじみの客がお願いすると作ってくれたりするんですが、これが、メチャクチャ美味かったりするんです。まあでも、なんか、最近はめんどくさがってなかなか作ってくれませんが。

 それにしても、この限定四食が気になります。さぞや手間がかかるのに違いありません。手間がかかるってことは、そりゃあ美味しいにきまっている。そう思うことでしょう。

 でも、四食ってなんか中途半端だよね~。なんで四食なんだろう?店主にきいてみたところ、

「だってさ~、イベリコ豚が四個入りパックなんだもん」

あはは、4個入りパックで売ってるイベリコ豚を入れてるだけってか(笑)。さらに、

「だってさ~、8個にしたら売れ残っちゃうかもしれないじゃん」

あはは(笑)。結局、あちこちで見かける「限定○食」ってのは、案外そんな理由なのかもね(笑)

2012年2月15日 (水)

第十話:高速道路のサービスエリア

 高速道路を使って長距離ドライブなどすると、食事はサービスエリアやパーキングエリアに頼るしかなくなります。まあ、こんなところは競争相手もいませんから、たいしたものも食えんだろうと思うと、意外と美味いものがあったりしますね。特にその土地になにか美味い特産品などあると、それを使ったメニューなどは結構いけます。当然ながらこういうところは行楽シーズンなんかだとすげー混んでます。私は混んでいるのが基本的に嫌いなので、そういうところは避けてしまいます。

 そんな時、お勧めなのが、大きなサービスエリアの近くの小さなパーキングエリアです。ただ、小さなパーキングエリアだと当然ながらそんなに大勢の客が来る事を想定していないところがあり、一度に大勢の客がきたりすると対応しきれなくなってパニックになるというような光景もよく見かけます。このあいだも小さなパーキングエリアで10人くらいの家族連れが一気に全員が最も手のかかるメニューを頼んだようで店のオバチャンたちがパニックになってました。まあ、そこはほんとに小さなところで、15人くらいしか入れませんから、それが処理能力の限界といったところなのでしょうね。しかし、わたしゃ、混んでいたのでカレーという一番手のかからないものを頼んで他人に迷惑をかけないようにと気を配りつつ並んで待っていたのに、前に並んだ家族連れのオッサンは手のかかるものをさんざん頼んだ上に、ご飯は大盛りに出来るか?とか、○○もくれ、とか余計なことばかり言いくさりやがって(怒)。

 どこのサービスエリア、パーキングエリアでどんな特産品があるかってのはホームページで調べると結構面白いです。高速道路を使って長距離ドライブをするときはチェックするといいですよ。ただ、ほんとになんにもないところもあるんですね。うちの近所の某パーキングエリアなんて、「昆虫採集が出来る」って紹介してありました。まあ、たしかにカブト虫なんかたくさんいそうなところですが、それより、そのパーキングエリアをよく利用している私としては、農家直販の落花生とか野菜なんてのがあるのに!と思いますが。

 まあ、特産品といっても、その土地に根ざした特産品であれば、わざわざサービスエリア、パーキングエリアにいかなくてもインターを降りればもっと沢山いろんなものがあったりしますのでわざわざそれ目当てにサービスエリアに行こうなんて思わないでしょうね。しかし、本来そうでないと、困ります。サービスエリアなんてものは、高速道路を利用する人が利用するためにあるのであって、サービスエリア目当てに人が集まるんだったら本末転倒というか、高速道路を利用している人には迷惑ですねぇ。言ってみれば社員食堂みたいなもんで、用もない人がサービスエリア目当てに来るんじゃ、たまったものではありません。

 以前、東京近郊の某サービスエリアを利用した時のことです。土曜日の昼食時でしたから、かなりの混雑でした。レストランに入ろうかと思ったら長蛇の列でした。もっと空いているところはないかな?とサービスエリアの中をウロウロしていたら、パン屋を発見したので、「まあいいか、ここでパンでも買って車の中ででも食うかな」と思いました。それで、その店に入って、パンを「どれにしようかな?」と迷っているうちに、背後がザワザワと騒がしくなってきました。見ると、なんだかしらんが、急にオバチャン達の大群がゾロゾロゾロゾロ大勢店に入ってきます。なんか異様な気配を感じたので、早くパン買って店を出よう、と思い、レジの方に行こうとするも、見ると、レジ前はオバチャン達の長蛇の列が占拠していて、行けないじゃないか!なんだこりゃ?と思って、それでもレジの方に行こうとするんだけど、列をかきわけようとすれば、オバチャン達の非難の視線が!「おれ、このパン買いたいだけなんすけど」。見るとそもそも、レジなんて機能してないじゃん。レジ打ってる店員はいなくて、いかにも頭悪そうな店員が、「お一人様1個限りになりま~す」とか得意気に大声でいいやがんの。「なんだそりゃ?パン1個しか買えねぇのかよ?腹減って死んじまうよ(ってオオゲサ?)」。私は頭にきたので、最後までこの顛末を見守ってやろうとその成り行きを見ていました。しばらくすると、トレイにメロンパンが満載でやってきました。そうすると、まるで動物園の動物が餌の時間に餌に突進するがごとく、メロンパンの争奪戦開始!って、一人1個なんだけどねぇ(呆)。呆れるやら頭にくるやらで、さすがの私も、「もう、やめたっ!こんな店でパンなんか買えるかいっ!」と叫び(って、オバチャン達のざわめきにかき消され、その声はほとんど誰にも聞こえなかったと思う。わしゃ、メロンパンしか売ろうとしない店員に言ったつもりだったんだがな)、店を去りました。(結局、その後、なんか食ったはずなんだけど、忘れた)

 まあ、この店は商売としては成功なのかもしれませんね。しかし、高速道路のサービスエリアというものは高速道路を利用する人にサービスを提供するためにあるわけで、近所のオバサンはいっぱい買いにくるけど、高速道路を利用している人が買えないのではサービスエリアとしては失格でしょう。そのうちメロンパンブームが去った時に酷い目にあうぞ~!って見てるんだけど、そうすると、次のブームなんか作り出したりして、結局、私のような通りすがりの高速道路利用者はいつまでたってもパンがかえんのよね。それでいいんか?この世の中!

 しっかしなぁ、メロンパンってそんなに欲しいか?いくら美味しいといっても、たかがメロンパンだぜ?しかも高速道路のサービスエリアなんだから、高速道路に乗らなくちゃこれないのよ(最短区間を乗ったとしても、金かかんのよ)。世の中、理解不能のことが多いっすね。もしかして、メロンパンを食べると血液がサラサラになったりする?んじゃないかとおもってますが(みのもんたさんが言ってましたっけ?)(笑)いや、メロンパン食べると痩せるのかな?

2012年2月 8日 (水)

第九話:無意味な食券

 食券というものは初めて目にしたのはデパートのレストランだったような気がします。レジでまず食券を買って、テーブルに座ると食券を回収にきて、半券をテーブルにおいていきます。これは多くの客をさばくには非常に合理的な方法と思えます。まず、注文を取る手間が省けるため、フロア要員は食券を回収して食事を運ぶだけでよくなります。これには時間がかからないので少ない要員でも多くの客をさばけます。それから、注文間違いも減るなど、色々メリットがあります。

 なにかと便利な食券方式ですが、なんでもかんでも食券にすりゃいいってもんでもありません。以前、カレー屋で食券方式にしているにもかかわらず全然効率が悪いところがありました。店員の手際が悪すぎて客が回転しないので、食券は買えてもカレーがなかなか食えない。初めて行った時に、ふと見るとスプーンを手にもって(エンピツとかペンでよくやるように)くるくる回している客がいたので、思わず笑ってしまったのですが、笑っている場合じゃなく、自分はいつになったらカレーが食えるのかと心配になる始末。

 見ていると、すげー混んでいるのに、山ほどあるオヒヤのコップに氷を入れることだけに専念するネーチャン店員がいるかと思えば、客を席に案内することしかしないニイチャンもいて、たった一人の店員が必死でカレーを運んでいるだけ。カウンターの内側に数人いる店員は食券を受け取ってオーダーを厨房に伝えるだけですが、客から食券を受け取ったらその場で捨てやがんの。そんなもんだから、誰が何を注文しているのかさっぱりわけがわからなくなりやがって、右往左往してる。私もなんとか座れて店員に食券を渡したんだけど、「○○カレーですね」といってポイッ。こらっ、捨てるんじゃないってば!ほらみろ、わけわかんなくなっただろ(怒)。

 さらに、見た目ではわからない「辛口」「甘口」がどれがどれなのかさっぱりわからなくなりやがって、甘口の食券を買ったにもかかわらず、食ったとたんに「辛い!」といってビックリすることもしばしば。さすがにこれはまずいとおもったのか、何週間か後に再度行ってみたら(って、そんな店に何度もいくなよ>オレ)カレーに「甘口」「辛口」の区別がなくなって、「辛味ソース」なるものが出るようになった。辛いのが欲しければ自分でやれってか?
(※この店は出来たばかりだったのですが、そのうち店員が教育されたのか入れ替えたのか知らんけど、まともになりました。食券も捨てないでちゃんと並べておくようになった。第一話の蕎麦屋もそうだけど、店をオープンするまえに店員の教育したほうがいいと思うよ)

 以前たまたま入ったラーメン屋の話し。昼飯時に入ったんだけど、客が2,3人しかいない。店員はオバチャンとラーメン作っているオヤジの二人なので、客の方が若干多いか同じくらいなわけ。で、見ると「食券を買ってください」って書いてある。んだけど、一体どこで買うんだろ?と思ってみると、店のずーっと奥の方に券売機がある。しかも2台も。客は2,3名なんだがな~。こんなに券売機があってもしょうがないんじゃ?しかも店の奥にあるか普通?

 まあ、それでも「まあいいか」と思って食券買って、何故か表に近い方に立っているオバチャンのところにスタスタと歩いていっていって食券をわたし、そこから店の中ほどのテーブルまでスタスタ歩いていって座る...って、なんで店員がじっとしていて客が店の中を歩きまわらなくちゃいけないわけ?

 とまあ、いろいろ疑問だらけなのですが、一番凄いのはそのオバチャンの役目だと思うな。オバチャンは食券を受け取ると、オヤジに「○○ラーメン!」って告げるだけよ。ほんとにそれだけ。しかもしかも、それからラーメンが出来るまでが何故かすんげー時間かかりやがるの。しかもしかもしかも、出来てきたラーメンがこれまたちょーマズイんだ(呆)。

 まあ、回転寿司にしてもそうだけど、ただ回転させりゃいいとか、ただ券売機を置いて食券方式にすりゃいいってもんじゃないぜ!まあ、意味のない回転寿司にしろ、食券にしろ、飲食店なので、こういう例はわかりやすくて笑えたり、腹が立ったりするわけですが、世の中こんなのいっぱいあるよ~な気がする、といっては余計なことまで考えてしまう私でありました。

2012年1月31日 (火)

第八話:あやしすぎる店

 昼食はいつも職場の近くで外食、ということになると、結局、同じ店ばかりに行くようになり、しばらくすると少し飽きてきて、新たな境地を開拓したくなります。なので、たまに新しい店が開店していたりすると、ちょっと試してみたくなります。といっても、それが全て成功とは限らず、というか、失敗の方が多くて、だから、こういう「伝説の飲食店」ネタができるわけですが...

 その日も、突如として新たに開店した店があったので職場の仲間と二人で入ってみることにしました。「あ、ここ、新しい店ができてるよ」「行ってみる?」といったからにはひきかえせません(というほどのこともないが...)。

 店のドアに手をかけた時に、

  「あれ?ここ、大丈夫?」

とは思ったんですよ。何しろ、まるで飲食店のようでないから。何やら洋服を売っていたり、雑貨、輸入雑貨かなあ?なにやら雑多なものを売っている様子でした。

 ドアをあけて入ってみると、なにやら東南アジア系のオネエサマ方数人がいらっしゃいました。これが、客のようでもあり、客のようでもなし...テーブルを囲んで、何かしゃべっているだけで、店員ではないけれど、客でもないのかな?という様子。「いったいここは?」と思った次の瞬間に、パンチパーマで恰幅の良い、いかにもソレ系のオッサンが出てきたので、ちょっとビビリました。

 オッサンは

  「いらっしゃい!」

と、野太い声で言うんです。なので私は

  「あ、あの~、おもてに、ランチの看板があったのですけど...」

というと、オッサン

  「ああ、やってますよ。どうぞ」

といってテーブルを指さすので、おそるおそる座ることにしました。

しかし、メニューがなく、オロオロしていると、ヤッちゃん、いや、オッサン、いやいや、ヤッちゃんでいいや、まあ、そのイカニモな方が

 「開店したばかりなんで、特別サービスのランチ作るんで、食べてもらえますか」

というんですよ。

 「は、はあ、それでお願いします」

としかいいようがないですわ。ただ、値段がいくらとは言わなかったなあ、という一抹の不安を抱えながらです。ボッタクリだったらどうしよう?と思い、財布の中にいくら入っていたかを思い出していました。

 しばらくすると、そのヤッちゃんが突然、店の外に出て行きました。すぐにマンガ本をかかえてかえってきて、いきなり私たちに渡すのですよ。

 「はい、これでも読んで待っていてください」

と。「は、はあ」といいながら、しかたなく半分震える手でマンガ本のページをめくりました。

 ほどなく、そのパンチパーマのヤッちゃんがランチを運んできましたので、とりあえず「残したらイカンだろう」などと思いながら食べていると、また、ヤッちゃんがやってきて

 「どうですか?」

 「何か気付いたことがあったら、なんでも言ってくださいよ」

というので「は、はあ、とくに...」と適当に答えていたら、なかなか許してくれない。

 「なんでもいいんですよ」「何かあるでしょう」

としつこくきくのです。それに耐えかねた相方が

 「ああ、まあ、あの、肉が固いですね」

って、おい!知らないぞ~!そんなこといっちゃって!するとヤッちゃんは「そうですか」といって眉間に皺をよせながら厨房の方を睨みつけ

 「おい!肉が固いってよ!」

と大声で怒鳴ります。

 しばらくすると、厨房から、これまたパンチのきいたパーマ(要するにパンチパーマ)の方が出てきました。そして、やっちゃんが、

 「おい、いまな。この方がな、肉が固いっておっしゃってるんだよ!!」

と。厨房にいた方は深々とおじぎをして「もうしわけありません」といいます。そうしたら相方は

 「いや、味はいい、味はとってもいいんですけど、ちょっと硬いかなあ...」

とかブツブツ言ってごまかしてました(笑)。
結局、会計も一人900円ほどで(って、特別サービスのランチでもなんでもないわなあ...)、ぼったくられることもなく、無事、その店を出ることができました。

 しかし、我々は、二度と行くことはありませんでした。それどころか、その店の周辺を避けて歩くようになりました。だって、また会ったりしたら、「こんどは肉がやわらかくなったから、食べてみてくれ」とかいって、店に連れ込まれてしまうかもしれん...

2012年1月28日 (土)

第七話:広くてちっちゃな回転ずし

 回転寿司というのも一種異様なものですね。ベルトコンベヤに載せられて店の中をくるくると回転する寿司を客が勝手にとって食べる。誰があんなものを考えたのか知らないけど、どうも私はあの風景自体が嫌いです。そもそも、普通に考えたらヘンじゃないの?なんとなく、養鶏場の鶏を思い出してしまうのです。ベルトコンベヤで餌が運ばれてきて、帰り際にコロッと卵を生むのです。最近は、寿司だけでなく、回転鍋などというものがあるそうですが、だれが好き好んであんな方式で食べたいと思うんだろう?と思うのですが、これがこれで結構流行るっていうんだから世の中恐ろしい。

 そういえば、近所のスーパーの食品売り場にも回転寿司があります。スーパーの食品売り場の寿司コーナーがその場で食べられるようにしてあるのですが、買い物客でごった返すスーパーの一角で、回転するベルトコンベヤーに向かって寿司を食っている姿はちょっと異様です。


 ドリフのもしものコーナー(古い!)ではないけれど、巨大な回転寿司というのがあったとしたらどうでしょう?一周するのに何十mもあるような巨大な回転寿司があったら?一周するあいだに寿司が乾いてカチコチになるんではないか?という心配もありましょうが、なにより、ベルトコンベヤーの一番下流に座るとほとんど何も食えないのではないかと思いますね。

 ところが、そんな心配をよそに(?)広い広い回転寿司屋は存在しました。それまた、昼飯時なのにその店だけやけに空いているという理由で入ってしまったのです。店に入ったら、大広間のような広い座敷にテーブルが並べてあります。まるで、温泉旅館の大宴会場のような雰囲気でした。それで、座ってメニューを見るも、飲み物以外何にも書いていない!「なんじゃこりゃ?」と思っていたら、店員がやってきて、「回転寿司になっておりますので、寿司はあちらの方からお好きなのをお取り下さい」というんですよ。

 見ると、その座敷のずっと奥の方になにやらちっちゃなベルトコンベヤーがくるくる回っています。あそこまでとりにいけっていうの?(驚)と思ったけれど、まあいいや、と思い、ベルトコンベヤーに行ってみるも、これがなかなか何にも出てこないんです。なんか、子供のおやつみたいなプリンとかそんなもんはグルグルまわっていたのですが、肝心の寿司が滅多に出てこないのです。

 そのうち、ベルトコンベヤの最も上流付近に黒山のひとだかりが。って、あたりまえですね。こんなに広い座敷にあれだけのベルトコンベヤー、しかも滅多に寿司が出てこないとあっては。

 しかも、そこで運良く寿司をゲットできたとします。しかし、そこからテーブルまで延々と数十mを運んでいかねばならず、何往復もしたら非常に疲れます。それで、しまいには、遠くのテーブルからそのベルトコンベヤをじーっと見つめていて、何か出てきたら客の誰かが「出てきたぞ!」と叫ぶ。そして、みんな急いでベルトコンベヤに駆け寄るといった具合になっていました。

 もう、満腹になるどころか足が疲れるやら、腹が立つやら...店を出て、「イェッ、ダメダコリャッ」と「いかりや長介」さんのごとくつぶやく私でした。

2012年1月21日 (土)

第六話:とんでもなく暗い店

 暗い店という場合には、まあ、普通、二種類あって、「陰気な店」という場合と、そもそも店の照明が暗いという場合があるでしょう。まあ、陰気な店っていうのもまた、それなりに風情があってよろしいということもありましょう。そういえば、陰気な店っていうのは意外と潰れないもんですね。逆に妙に明るさを装っている店っていうのがだいたい怪しいんです。第一話にでてきた「そば屋」も妙に明るくて、看板も「ここはパチンコ屋か?」と思うくらい電気がキラキラしてましたもん。「看板派手にすりゃ客がはいるっつーもんでもねーだろ」とか思ってましたが、みると、看板は派手なくせに、メニューが模造紙にマジックで書いてあるという妙さが味にあらわれていました。

 さて、以前、友人と飲んだ時、最近よくいく店というのがあるからそこにいこうという話しになりました。それは六本木とかいう場所でした(笑)。名前だけで田舎者は緊張します(笑)。 何軒かシャレな店をハシゴした後、「もう一軒いこう」といって(いったい何軒ハシゴしてるんじゃ?)いくと、そこは暗い暗い階段を登っていって、「あら、こんなところに店があったの?」というような店でした。

 店に入ってまず驚いたのが「暗い!!」。って、これは、物理的に「暗い」という方の暗さの方ですが、マジで「ここは映画館か?」と思い、思わずスクリーンを探してしまいます。テーブルに座ると店員がオシボリを持ってきたのですが、これが青白くやっと見分けられる程でした。「さーて、何にする?」といってメニューを見る....って、暗くて読めないじゃないか!!メニューを明るい方にかざしてみると、かろうじて見えるけれど、殆ど何書いてあるかわからんぜ!!しょうがないので「ま、なんでもいいや、てきとーに頼んで」と言って、見ると、友人はほとんど幽霊屋敷の幽霊みたいに青白い顔が暗闇に浮かび上がっていて、メニューに目を近づけて必死で見ています

 まあ、そういうわけで、飲み物と料理はそいつに任せたのですが、任せてしまった上に暗いので、皿の上に一体何がのっかっているのかは、ほとんど、匂いと、箸で触った時の感触でしかわからず、おそるおそる口に運んで「ん?、これはヤキソバ?」という風にわかるといった具合。ようやくわかる皿の輪郭をたよりに、料理の神経衰弱をやってる状態。

  トイレにいくのも大変で、つまずきそうになりながら、トイレマーク(ここだけは何故か明るく光っていた)をたよりにソロソロといくといった具合。ところが、トイレの中は異様に明るくて(って、この明るさが普通だと思うぞ)一瞬まぶしくて眼がくらみます。まあ、それから当然想像されるように、トイレから出ると、これまた暗黒の世界に放り出されるわけですから、眼が暗さに慣れるまでしばらくかかってしまうという具合。

 何時間かそこで飲み食いした後、その店から出た時は、妙な安心感と疲労感を覚えた私でした。しかし、「なんでこの店はこんなに暗いの?」と後で考えてみたのですが、も、もしかして、あのヤキソバだと思って食べたものは・・・・(汗)

2012年1月16日 (月)

第五話:謎のホカ弁

 それにしても、私も随分ヘンな店にばかり行っているんだなぁと感心します。ただヘンな店ということならまだまだ沢山あるのですが、どう考えてもネタにならないというものもあります。たとえば、よく、文房具屋とか金物屋のような、滅多に客が来ない店には客が来た事を知らせるチャイムがついている事がありますよね。入口のドアを開けるといきなりメロディーが流れて、店の奥の方からオバチャンが「はーい」といいながら、でてくるあれですが、これが入口についている中華料理屋というのがありました。私はその店に入った事はなく、また、その店に客が入っているのを見たのは一度しかないのですが、たまたまその店の前を通りかかった時、オッサンが一人、店に入ろうとしていました。入口のドアをあけると、客が来たことを知らせるチャイムが鳴っていました。いちおう、昼飯時ですよ。ただ、この店には(怖くて)入った事がなかったので、詳しい話が書けません。

 さて、その昔、東京の海辺でお仕事していた時のことです。なにやら築地の市場が移転するという話しがあるそのあたりです。今は随分とオシャレな都会になっていますが、私がはじめてそこに行った頃はまだ何にもなく、結構なカルチャーショックでした。まず、銀行がなかった。某氏にいわせると貨幣経済が発達していないからだそうで、そういえば、何故か団地があって人が沢山すんでいるのだけど、まわりは工場や倉庫ばかりで、スーパーとかの日用品や食品を売る店がほとんどありませんでした。だから、道端で野菜とか売ってたりしたのですが、あれって物々交換してたんだー(違)。とかとか。夕方になると、団地の前に食料品を売る車がやってくるのですが、その車、手品師がきたのか?と思わせるようなBGMとともにやってくるのです。しかし、店がないわりにはパチンコ屋が結構あって、実はパチンコ玉が貨幣として流通していたという噂も(違)。当然ながら海がすぐそばで、海からの風がものすげー強くて、地元の人間は髪の毛がどちらに傾いているかで住んでいる場所がわかるそうで(違)

 そんなわけですから、飲食店も数が限られてました。昼飯は毎日ホカ弁の配達をたのんでいました。このホカ弁のメニューには何十種類もあって、私などは、全種目制覇を目指して、メニューに食べた日付を書き込んでがっばっていました。難関は、季節限定のカキフライ弁当とか、胸焼けがしそうな焼きそば大盛りとかでしたが、あと数種目を残して、そこから去ってしまって、いまだに残念です。

 さて、そのホカ弁の出前ですが、謎が沢山ありました。まず、いつもオッサンが一人で配達に来るのですが、その数たるや20や30どころではなかったりするのですね。我々のいたフロア以外にも配達していたのを目撃しましたから、とんでもない数になるのですが、それがいつも「素手」。どうやってそんなに沢山を「素手」で運べるのか謎でした。ある日、そのオッサンが弁当満載のポリエチレン袋を10個近くかかえてエレベータに乗るのを私は目撃し、たいそう驚きました。

 しかし、そのオッサンがエレベータに乗るのを目撃したという人は非常に少なく、私がその目撃談を他の人にしても信じてもらえませんでした。まだ、少数ながら、エレベータに乗るところは目撃した人がいたのですが、ビルに入って来たところを目撃したという人は誰一人いませんでした。そもそも、オッサンが店から我々のいたビルまでどうやって運んでいるのかすら謎だったのです。車で運んでいるとしたら、昼飯時に車からそんなに沢山の弁当を下ろしているのだから目立つ筈なのですが、そもそも、昼飯時にそんな車が止まっていたのを目撃した人は誰もいないのです。

 一度、何故か夕飯時にそこのホカ弁が買いたくなって、住所をたよりに、買いにいこうとしました。しかし、いくら探せどもその番地にはそんな店などないのです。しかも、その場所は団地の中と来たもんだ。 冬の夕方でしたから、海からの冷たい風がビュービュー吹いて、髪の毛がおもいっきり傾きながら、謎は深まるばかりでした。

2012年1月15日 (日)

第四話:下町のオバチャンの店

  もう20年程前になるが、私は東京のとある下町で仕事をしていた。そこに、実に下町に相応しい店がありました。その店は私が仕事をしていた建物のすぐ隣にあったのですが、一見すると築30年くらいの木造の民家なのです。がしかし、そこが普通の民家でない事はすぐわかります。一階のガラス窓の奥になにやら惣菜ののった皿がいくつか置いてあります。それを売っているらしいのです。変な家だなぁと思っていたのですが、どうも昼飯時になると、飯屋らしき看板が家の前に出て、時々中に人が入っていくようです。そこで、ある日私は勇気を振り絞って、入ってみる事にしました。

  入ってみると、緑色のテーブルが3つばかしと、椅子が並べてありました。で、下町に似つかわしい(?)某社民党党首に似たオバサン※が出てきました。壁には小さなホワイトボードがかかっていて、そこになにやら色々書いてあります。しかし、何を注文したらよいものやら、そのホワイトボードを見てもよくわからなかったので、またまた勇気を振り絞って、その、社民党党首に似たオバサンに尋ねてみる事にしました。私の同僚の暴走族アガリのいかにもな風貌のニイチャンと一緒だったのですが、二人で顔を見合わせて、結局、私が「あの、メニューはどうなってるんでしょう...」と、恐る恐るきいたのです。オバチャンは一瞬眉間に皺がよったような気がしましたが、直後に笑顔になり、親切に教えてくれました。

  そこのシステム(?)はつまりこうでした。ホワイトボードには十数種類のおかずが書いてあります。そのおかずを2品、あるいは3品組み合わせて注文する。すると、そのおかず2品なり3品とライスと味噌汁がついて出てくると。こういうわけ。暴走族あがりのニイチャンは「あ、ここのシステムわかってなくて、すいませんっす」と、ちっちゃくなって謝っていました。

 味の方もまあまあだったので、私はほとんど毎日、同僚とその店に通いました。なにしろ職場から近いし、おかずの組み合わせを選べば何百種類もの組み合わせが出来るので飽きる事もありません。そうやって、毎日のように通っているとその社民党党首に似たオバサンとなんとはなしに話をするようになりました。なにしろ下町ですのでオバサンの言葉は当然ながらかなり純粋なべらんめぇ調でした。

  同僚の中にどうも食が細いのがいて、いつも少し食べ残してしまう奴がいたので、そのオバサンにしょっちゅう「残すんじゃないよ!!」と叱られていたのですが、そのうち、オバサンの方でもそいつには少なめにご飯をよそったりするようになっていました。なんとも家庭的でありました。

 その店では、ときどきお新香とか梅干しが配られました。といっても漬物桶にはいったままテーブルに置かれます。「好きなだけとって食べてね」という具合でした。

 その下町の職場にいたのは半年くらいだったのですが、ほぼ毎日通っていました。それから10年後くらいに、まだあるかな?と思っていってみたら、看板らしきものは残っていました。その後さらに10年くらいたちますが、オバチャンはどうしているのか、気になりますね。

※これを最初に書いたのが2000年くらいだったと思う。ここでいう社民党党首とは当時の「土井たか子」さん。

2012年1月14日 (土)

第三話:世界最速のトンカツ

 普通、時間がない時の食べ物といえば、駅の立ち食いソバとか、牛丼を思い浮かべるでしょう。しかし、異様に早い「とんかつ」というのがありました。牛丼よりも、駅ソバよりも注文してから出てくるまでの時間は短いのです。もっというと、店に入ってから食べ始めるまでの時間は世界最速である事は間違いありません。それは、カウンターの内側にいるオジサンと、カウンターの外で皿を運んでいるオジサンの絶妙なコンビネーションが生み出すワザによって成り立っていたのです。

 我々が店に入ると、まずどこに座ろうかとキョロキョロしまよね。その数秒間の間に、カウンターの外にいるオジサンはお茶とお新香と「ランチのおかず皿」を手に用意するのです。我々が席にすわるやいなや、そのオジサンがやってきて、テーブルにお茶とお新香を置きます。これはどのメニューでも共通であるためです。その時、もう一方の手には「ランチのおかず」ののった皿が。そこで、一瞬、「たまには違ったものが食べたいなぁ」と思うかもしれません。しかし、それはオジサンが片手にもった「ランチのおかずの皿」のプレッシャーには勝てないのです。

 そのプレッシャーに負けて「ラ...ランチ」と言うやいなや、テーブルの上にはランチのおかずの皿が置かれます。「ラ...ラン」の時点で皿とテーブルの距離は約10cm以内になっていて「....チ」でテーブルと皿が接触するという具合です。
けっしてフライングではありません。ランチの皿が置かれるのは客が「ランチ」と言い終わったわずかな後なのです。

  そうして「ランチのおかずの皿」を置いたオジサンはカウンターの内側にいるオジサンに「ランチ!!」と告げます。しかしその時点までにカウンターの内側にいるオジサンはライスと味噌汁をよそっています。数秒後、そのライスと味噌汁がテーブルに置かれるという具合です。

実測したわけではありませんが、客が「ランチ」と言い終わってから平均5秒後には全てのものがテーブルの上に揃っていました

 これが、カウンターの内側にいるオジサンとカウンターの外にいるオジサンの絶妙のコンビネーションによるものである事がある日明らかになりました。それは、カウンターの内側にいたオジサンが一カ月くらいのあいだ居なかった事があり、普段はカウンターの外にいるオジサンがカウンターの内側へ、カウンターの外にはオバサンがいたことがあります。その時、注文してからテーブルの全てが揃うまで約30秒かかっていました。それでも早いには早いのですが、どこかしら、その絶妙のコンビネーションが上手くかみ合っていない印象でした。

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