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2012年1月14日 (土)

第三話:世界最速のトンカツ

 普通、時間がない時の食べ物といえば、駅の立ち食いソバとか、牛丼を思い浮かべるでしょう。しかし、異様に早い「とんかつ」というのがありました。牛丼よりも、駅ソバよりも注文してから出てくるまでの時間は短いのです。もっというと、店に入ってから食べ始めるまでの時間は世界最速である事は間違いありません。それは、カウンターの内側にいるオジサンと、カウンターの外で皿を運んでいるオジサンの絶妙なコンビネーションが生み出すワザによって成り立っていたのです。

 我々が店に入ると、まずどこに座ろうかとキョロキョロしまよね。その数秒間の間に、カウンターの外にいるオジサンはお茶とお新香と「ランチのおかず皿」を手に用意するのです。我々が席にすわるやいなや、そのオジサンがやってきて、テーブルにお茶とお新香を置きます。これはどのメニューでも共通であるためです。その時、もう一方の手には「ランチのおかず」ののった皿が。そこで、一瞬、「たまには違ったものが食べたいなぁ」と思うかもしれません。しかし、それはオジサンが片手にもった「ランチのおかずの皿」のプレッシャーには勝てないのです。

 そのプレッシャーに負けて「ラ...ランチ」と言うやいなや、テーブルの上にはランチのおかずの皿が置かれます。「ラ...ラン」の時点で皿とテーブルの距離は約10cm以内になっていて「....チ」でテーブルと皿が接触するという具合です。
けっしてフライングではありません。ランチの皿が置かれるのは客が「ランチ」と言い終わったわずかな後なのです。

  そうして「ランチのおかずの皿」を置いたオジサンはカウンターの内側にいるオジサンに「ランチ!!」と告げます。しかしその時点までにカウンターの内側にいるオジサンはライスと味噌汁をよそっています。数秒後、そのライスと味噌汁がテーブルに置かれるという具合です。

実測したわけではありませんが、客が「ランチ」と言い終わってから平均5秒後には全てのものがテーブルの上に揃っていました

 これが、カウンターの内側にいるオジサンとカウンターの外にいるオジサンの絶妙のコンビネーションによるものである事がある日明らかになりました。それは、カウンターの内側にいたオジサンが一カ月くらいのあいだ居なかった事があり、普段はカウンターの外にいるオジサンがカウンターの内側へ、カウンターの外にはオバサンがいたことがあります。その時、注文してからテーブルの全てが揃うまで約30秒かかっていました。それでも早いには早いのですが、どこかしら、その絶妙のコンビネーションが上手くかみ合っていない印象でした。

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