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2012年1月16日 (月)

第五話:謎のホカ弁

 それにしても、私も随分ヘンな店にばかり行っているんだなぁと感心します。ただヘンな店ということならまだまだ沢山あるのですが、どう考えてもネタにならないというものもあります。たとえば、よく、文房具屋とか金物屋のような、滅多に客が来ない店には客が来た事を知らせるチャイムがついている事がありますよね。入口のドアを開けるといきなりメロディーが流れて、店の奥の方からオバチャンが「はーい」といいながら、でてくるあれですが、これが入口についている中華料理屋というのがありました。私はその店に入った事はなく、また、その店に客が入っているのを見たのは一度しかないのですが、たまたまその店の前を通りかかった時、オッサンが一人、店に入ろうとしていました。入口のドアをあけると、客が来たことを知らせるチャイムが鳴っていました。いちおう、昼飯時ですよ。ただ、この店には(怖くて)入った事がなかったので、詳しい話が書けません。

 さて、その昔、東京の海辺でお仕事していた時のことです。なにやら築地の市場が移転するという話しがあるそのあたりです。今は随分とオシャレな都会になっていますが、私がはじめてそこに行った頃はまだ何にもなく、結構なカルチャーショックでした。まず、銀行がなかった。某氏にいわせると貨幣経済が発達していないからだそうで、そういえば、何故か団地があって人が沢山すんでいるのだけど、まわりは工場や倉庫ばかりで、スーパーとかの日用品や食品を売る店がほとんどありませんでした。だから、道端で野菜とか売ってたりしたのですが、あれって物々交換してたんだー(違)。とかとか。夕方になると、団地の前に食料品を売る車がやってくるのですが、その車、手品師がきたのか?と思わせるようなBGMとともにやってくるのです。しかし、店がないわりにはパチンコ屋が結構あって、実はパチンコ玉が貨幣として流通していたという噂も(違)。当然ながら海がすぐそばで、海からの風がものすげー強くて、地元の人間は髪の毛がどちらに傾いているかで住んでいる場所がわかるそうで(違)

 そんなわけですから、飲食店も数が限られてました。昼飯は毎日ホカ弁の配達をたのんでいました。このホカ弁のメニューには何十種類もあって、私などは、全種目制覇を目指して、メニューに食べた日付を書き込んでがっばっていました。難関は、季節限定のカキフライ弁当とか、胸焼けがしそうな焼きそば大盛りとかでしたが、あと数種目を残して、そこから去ってしまって、いまだに残念です。

 さて、そのホカ弁の出前ですが、謎が沢山ありました。まず、いつもオッサンが一人で配達に来るのですが、その数たるや20や30どころではなかったりするのですね。我々のいたフロア以外にも配達していたのを目撃しましたから、とんでもない数になるのですが、それがいつも「素手」。どうやってそんなに沢山を「素手」で運べるのか謎でした。ある日、そのオッサンが弁当満載のポリエチレン袋を10個近くかかえてエレベータに乗るのを私は目撃し、たいそう驚きました。

 しかし、そのオッサンがエレベータに乗るのを目撃したという人は非常に少なく、私がその目撃談を他の人にしても信じてもらえませんでした。まだ、少数ながら、エレベータに乗るところは目撃した人がいたのですが、ビルに入って来たところを目撃したという人は誰一人いませんでした。そもそも、オッサンが店から我々のいたビルまでどうやって運んでいるのかすら謎だったのです。車で運んでいるとしたら、昼飯時に車からそんなに沢山の弁当を下ろしているのだから目立つ筈なのですが、そもそも、昼飯時にそんな車が止まっていたのを目撃した人は誰もいないのです。

 一度、何故か夕飯時にそこのホカ弁が買いたくなって、住所をたよりに、買いにいこうとしました。しかし、いくら探せどもその番地にはそんな店などないのです。しかも、その場所は団地の中と来たもんだ。 冬の夕方でしたから、海からの冷たい風がビュービュー吹いて、髪の毛がおもいっきり傾きながら、謎は深まるばかりでした。

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