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2012年1月15日 (日)

第四話:下町のオバチャンの店

  もう20年程前になるが、私は東京のとある下町で仕事をしていた。そこに、実に下町に相応しい店がありました。その店は私が仕事をしていた建物のすぐ隣にあったのですが、一見すると築30年くらいの木造の民家なのです。がしかし、そこが普通の民家でない事はすぐわかります。一階のガラス窓の奥になにやら惣菜ののった皿がいくつか置いてあります。それを売っているらしいのです。変な家だなぁと思っていたのですが、どうも昼飯時になると、飯屋らしき看板が家の前に出て、時々中に人が入っていくようです。そこで、ある日私は勇気を振り絞って、入ってみる事にしました。

  入ってみると、緑色のテーブルが3つばかしと、椅子が並べてありました。で、下町に似つかわしい(?)某社民党党首に似たオバサン※が出てきました。壁には小さなホワイトボードがかかっていて、そこになにやら色々書いてあります。しかし、何を注文したらよいものやら、そのホワイトボードを見てもよくわからなかったので、またまた勇気を振り絞って、その、社民党党首に似たオバサンに尋ねてみる事にしました。私の同僚の暴走族アガリのいかにもな風貌のニイチャンと一緒だったのですが、二人で顔を見合わせて、結局、私が「あの、メニューはどうなってるんでしょう...」と、恐る恐るきいたのです。オバチャンは一瞬眉間に皺がよったような気がしましたが、直後に笑顔になり、親切に教えてくれました。

  そこのシステム(?)はつまりこうでした。ホワイトボードには十数種類のおかずが書いてあります。そのおかずを2品、あるいは3品組み合わせて注文する。すると、そのおかず2品なり3品とライスと味噌汁がついて出てくると。こういうわけ。暴走族あがりのニイチャンは「あ、ここのシステムわかってなくて、すいませんっす」と、ちっちゃくなって謝っていました。

 味の方もまあまあだったので、私はほとんど毎日、同僚とその店に通いました。なにしろ職場から近いし、おかずの組み合わせを選べば何百種類もの組み合わせが出来るので飽きる事もありません。そうやって、毎日のように通っているとその社民党党首に似たオバサンとなんとはなしに話をするようになりました。なにしろ下町ですのでオバサンの言葉は当然ながらかなり純粋なべらんめぇ調でした。

  同僚の中にどうも食が細いのがいて、いつも少し食べ残してしまう奴がいたので、そのオバサンにしょっちゅう「残すんじゃないよ!!」と叱られていたのですが、そのうち、オバサンの方でもそいつには少なめにご飯をよそったりするようになっていました。なんとも家庭的でありました。

 その店では、ときどきお新香とか梅干しが配られました。といっても漬物桶にはいったままテーブルに置かれます。「好きなだけとって食べてね」という具合でした。

 その下町の職場にいたのは半年くらいだったのですが、ほぼ毎日通っていました。それから10年後くらいに、まだあるかな?と思っていってみたら、看板らしきものは残っていました。その後さらに10年くらいたちますが、オバチャンはどうしているのか、気になりますね。

※これを最初に書いたのが2000年くらいだったと思う。ここでいう社民党党首とは当時の「土井たか子」さん。

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