第十一話:限定四食の秘密
もう、かれこれ20年は通っているなじみの店があります。蕎麦屋なのですが、店主が日本酒が大好きで、日本酒を楽しむ会を毎月やっています。日本酒を楽しむ会は会費を払って、あとは、ずらりと並んだ一升瓶から、好きな酒を好きなだけ飲むという会なのです。 日本酒好きの人にはたまらない銘柄、普段なかなか手に入らない酒など沢山出るので、一度参加したらハマってしまう人が多いのです。それに、常連ばかりが集まる会なので、20年もやっていると、常連さん同士、顔見知りになり、毎月、その場でしか会わない友達が沢山います。
私などは店主と酒蔵めぐりの旅行にいったり、日本酒のイベントに参加したりと、日本酒を楽しむ会以外でも楽しませてもらっています。
私などは、なじみの客ですから、もう我が家のようなもので、いくと、店主が、
「ビール飲なら冷蔵庫から適当に出して飲んでいいよ」
ってなもんで、勝手にやらせてもらったりします。
先日などは客が多くて忙しすぎて、私はしばらく放置されてしまい、ビールと日本酒だけで1時間過ごしました(笑)。その間、つまみもなにも一切なく(笑)。
さすがに、1時間も酒だけ飲んでたら、つまみが欲しくなり、まわりの数人と
「そろそろつまみが欲しいなあ、こりゃあ、手伝わないとダメかな」
と、笑いながら相談してました。
まあ、だいたい日本酒を楽しむ会といっても、途中からは店主が一緒になって飲む会なんですから、時々、客が店を手伝ったりしてます。
蕎麦屋なので、最後のシメに蕎麦を出してくれるんですが、蕎麦が出るころには、みんな相当に出来上がっていますので、
「ねえ、マスター(店主はなぜかそう呼ばれている)、そろそろ蕎麦が食べたいなあ」
と誰かが言うのを合図に、店主が重い腰を上げて蕎麦を作り始めます。この蕎麦がまた、美味いんだ。とても酔っぱらった店主が作ったものとは思えない(笑)。
しばらく前から、壁に
「イベリコ豚 肉せいろ はじめました 限定四食」
と、貼りだしてあるのが気になっていました。 そういえば、メニューにない幻のメニューというのがいくつかありました。なじみの客がお願いすると作ってくれたりするんですが、これが、メチャクチャ美味かったりするんです。まあでも、なんか、最近はめんどくさがってなかなか作ってくれませんが。
それにしても、この限定四食が気になります。さぞや手間がかかるのに違いありません。手間がかかるってことは、そりゃあ美味しいにきまっている。そう思うことでしょう。
でも、四食ってなんか中途半端だよね~。なんで四食なんだろう?店主にきいてみたところ、
「だってさ~、イベリコ豚が四個入りパックなんだもん」
あはは、4個入りパックで売ってるイベリコ豚を入れてるだけってか(笑)。さらに、
「だってさ~、8個にしたら売れ残っちゃうかもしれないじゃん」
あはは(笑)。結局、あちこちで見かける「限定○食」ってのは、案外そんな理由なのかもね(笑)
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